あなたは、ランニングをした後や自転車を漕いでいるとき、膝関節の外側に痛みがでたり、だるくなったりしませんか?
膝の外側の骨の出っ張りを親指で押してみると、痛みが出たりしていませんか?
実はそれ、「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」のサインかもしれないんです・・・!
こんにちは、理学療法士10年目のふくです。
最近、ランニングや自転車、ゴルフなどのスポーツだけでなく、階段が原因で腸脛靭帯炎になる人が増えています。
腸脛靭帯炎とは、太腿の外側にある「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」が膝の外側にある「骨(ほね)」を何度も擦ることで負担がたまり、膝関節の外側に痛みが出る症状のことです。
ちょうど、長さ3mmの坊主頭にタオルを容赦なくゴシゴシするときのような痛みになります。
この腸脛靭帯炎、最初は以下のように感じる方もいるかもしれません。
「なんだか膝の外側が痛むな」
「でも、寝れば治るし・・・大丈夫!」
これを、放置して慢性化すると、日常生活でも痛みを感じるようになってしまいます。
例えば、長時間デスクワークをした後に立って歩き出そうとするときや、座ってスマホをしていて急に立とうとしても、痛くて立てなくなってしまうようになるんです。
さらには、膝の外側の痛みはいつしか慢性化してしまい、最悪のケース、膝が曲げられないほどの痛みになって手術が必要になってしまうことも・・・!
腸脛靭帯炎になると、パソコンを使ったデスクワークなどにも大きな影響が出るため、職場の同僚にも迷惑がかかってしまいます。
つまり、腸脛靭帯炎はあなたひとりだけの困りごとではないということです。
そうならないためには、「これって腸脛靭帯炎かも・・・」と思った段階で早めに対処しておくことが大切です。
今回は、腸脛靭帯炎がなぜおこるかのメカニズムを解説したうえで、腸脛靭帯炎を早く治すための方法や、外側の膝の痛み「腸脛靭帯炎」を予防するためのストレッチについてご紹介します。
膝の外側の骨の出っ張りを親指で押してみると痛みが出る人は、痛みがこれ以上悪化しないためにも、そして腸脛靭帯炎を早く治すためにも、この記事を読んで早めの対策をしてください。
それでは、まいります。
腸脛靭帯炎は「靭帯(じんたい)」が「大腿骨顆部(だいたいこつかぶ)」という骨に何度も擦れることで起きる!
腸脛靭帯炎についてしっかりとしっていただくためには、まずは腸脛靭帯炎がなぜ起こるのかを解説しますね。
腸脛靭帯炎は、膝の外側にある「筋肉の膜」と「外側上顆」というパーツに炎症が起きている状態です。
「筋肉の膜」や「外側上顆」がどんなパーツかわからない人は多いので、少し説明しておきますね。
私たちが運動するとき、実は、横にバランスを崩さないように常に働いている筋肉があることを知っていましたか?
横にバランスを崩さないように常に働いている筋肉が膝の外側にある腸脛靭帯なのです。
横にバランスが崩れそうになると、支えてくれるわけです。
たとえるなら、”ハンモック”のような感じです。
ハンモックは、立ち木や柱などに両端を吊り、丈夫なひもで編まれた網です。
この”網”がいわゆる腸脛靭帯に当たります。
腸脛靭帯が身体を支えることで、運動していても横にバランスを崩さないのですね。
そして、腸脛靭帯は膝の外側で大腿骨外側上顆といわれるパーツの上を走ります。
大腿骨外側上顆は、骨が突出している部分です。
膝を曲げる、伸ばす、の動きで腸脛靭帯はその大腿骨外側上顆というパーツをクリックリッと行ったり来たりすることになります。
さて、問題はここからです。
膝を多く動かせば動かすほど、腸脛靭帯は大腿骨外側上顆という骨の出っ張りの上をせわしなく動くことになります。
そうすると、その過程で、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆がこすれ続け、腸脛靭帯が炎症を起こして腫れる場合があるんです・・・!
そうなると大変です。
なぜなら、腸脛靭帯が腫れると、骨の出っ張りと余計に摩擦が強くなって、腸脛靭帯が動きにくくなるからです。
また、動きにくくなるだけでなく、腫れた部分に骨の出っ張りが触れるたびに「痛いっ!」と痛みを感じるようにもなります。
その症状こそが、腸脛靭帯炎の正体です。
つまり、腸脛靭帯炎になる原因は、膝をたくさん動かすことで、膝の外側の「腸脛靭帯」と「大腿骨外側顆」がこすれすぎてしまい、炎症を起こすからなのです。
ただ、この腸脛靭帯が炎症を起こす原因はそれだけではありません。
「股関節周りの筋肉の硬さ」が原因になりやすいのです。
さきほど、腸脛靭帯は、「筋肉の膜」と説明しましが、体に詳しい人は、「腸脛靭帯は、靱帯(じんたい)と名付けられているのに、筋肉の膜なの?」と思う方もいるかもしれませんね。
腸脛靭帯は、複数の筋肉の膜が集ることで靱帯のように太く強靭にできているためその名がついています。
前十字靭帯や内側側副靭帯などといった関節を取り囲むものとは違うのです。
では、どのような筋肉が集まって腸脛靭帯ができているのでしょうか。
腸脛靭帯を構成している筋肉は、主に以下の筋肉です。
- 大殿筋
- 大腿筋膜張筋
- 中殿筋
これらの筋肉は、すべて股関節を動かすときに働く筋肉で、その膜が腸脛靭帯を通して膝の外側へとつながっています。
腸脛靭帯自体には伸縮する機能はなく、「大殿筋」「大腿筋膜張筋」「中殿筋」が硬くなることで、腸脛靭帯がいわゆる張った状態になるのです。
股関節周りの筋肉の硬さからくる腸脛靭帯の張った状態で膝を動かすと、大腿骨外側上顆といわれる膝の外側にある骨の出っ張りをさらに強く擦り続けることになります。
ハンモックの網が強く張った状態ですと、たわみがなくなりひもに負担がかかりやすくなります。
腸脛靭帯が張った状態は、この”ひも”に負担がかかっている状態に当たります。
腸脛靭帯炎の方の太ももを触ると、外側が異様に硬くなっていることがわかるはずです。
実は、膝の外側の痛みの原因となっている腸脛靭帯炎を治すためには、異様に硬くなっている股関節周りの筋肉をストレッチして、腸脛靭帯を緩めてあげることが重要になってきます。
いかがでしたか?
ここまでお読みいただき、「もしかすると自分は腸脛靭帯炎かも・・・」と思った方は、次の対処法を試してみてください。
腸脛靭帯炎の3つの対処法
腸脛靭帯炎かもしれないと思ったら、早めの対処が必要です。
とはいえ、対処の方法とタイミングを間違えると逆効果になることも・・・!
ここからお話しするのは、痛みを和らげることから再発予防まで効く対処法なので、覚えておいてくださいね。
といっても、腸脛靭帯炎の対処法はとてもシンプル。
その2.再発予防には日ごろのストレッチを
その3.多少痛くても運動せざる負えないときはテーピングを活用
これら3つです。
それぞれの対処法について、わかりやすく解説します。
【腸脛靭帯炎の対処法 その1】
運動直後は膝の外側を冷やすことが基本です!
ランナー膝とも言われる腸脛靭帯炎は、運動を開始したときは痛みはなく、次第に膝の外側に痛みが走りだすケースが多いです。
できれば無理はせず痛みが走り出す前に、運動を中止しましょう。
しかし、運動に夢中になってしまって後から「膝の外側に痛みが・・・」と気づいた時には、痛みのある場所を冷やすことが基本です。
冷やすときの注意点は以下の通りです。
- 氷嚢で直接当てず、薄いタオルの上から氷嚢を当てる
- 冷やす時間は10分以内
- 氷嚢のないときは、袋に水を入れるだけでもOK
氷嚢で冷やし過ぎると、逆に炎症を強くしてしまいます。
指標としては、冷やした部分の皮膚が赤くなってきたら冷やし過ぎです。
これを避けるためにハンドタオルなどの薄い生地の上から氷嚢を当てると、じわじわと冷えてきて心地よくなります。
また、冷やし過ぎを防ぐために、冷やす時間は10分以内に留めておきましょう。
長時間冷やすと血行が悪くなりやすく、組織の回復を妨げてしまうことにもつながるため「1時間に1回、10分だけ冷やす」というセッションを組んで行った方が効果的です。
ただ、なかには氷嚢がないというご家庭もあると思います。
その場合は、袋に水道水を入れて、「直接」膝の外側の痛みがある場所へ当てても効果的です。
「ガンガンに冷やしたい」と思う気持ちもわかりますが、キンキンに冷やしてしまうことは血行を悪くしやすいため避けましょう。
【腸脛靭帯炎の対処法 その2】
股関節周りの筋肉をストレッチする
腸脛靭帯炎は、腸脛靭帯を構成している股関節周りの筋肉が固いことが根本の原因です。
そのため、腸脛靭帯炎を治すためには、股関節周りの筋肉を柔らかくすることが何よりも重要なんです!
とはいえ、どうやって柔らかくしていいかわかりませんよね。
そこで、おすすめなのがストレッチです。
適切なストレッチをすれば、整体や病院に行かなくても膝の外側の痛みを和らげることは可能です。
(※痛みが運動後にも続いたり、慢性的に痛い場合などは直ちに医師の診察をするようおすすめします。)
注意点としては、膝の外側に痛みの強いときにストレッチをしてしまうと悪化する可能性がありますので、膝の外側に痛みのないとき再発予防として取り組むとよいでしょう。
ポイントは、「大殿筋」「中殿筋」「大腿筋膜張筋」のストレッチをすることです。
ストレッチの方法に関しては、以下の2つの動画をチェックしてみてください。2つ目の動画では、チューブを使っていますが、代用としてバスタオルを利用しましょう。
【腸脛靭帯炎の対処法 その3】
膝を固定するテーピングの巻き方
「膝の外側に痛みがなくなってきたから、また普通に運動をしたい!」と思っても無理は禁物です。
しっかりと痛みを治してから復帰しましょう。
とはいえ、マラソンやロードバイクをしている人にとっては大事な大会が控えているという人も多いはず。
そこでおすすめなのが、サポーターやテーピングなどで膝を固定して、腸脛靭帯への負担を少なくすることです。
テーピングの方法については、以下の動画を確認してください。
まとめ
いかがでしたか?
楽しみにしていたマラソンやロードバイク、ゴルフ、登山などができなかったら悲しいですよね。
腸脛靭帯炎は、ある種活動的な方のなりやすい怪我ともいえます。
何度も言いますが、腸脛靭帯炎の予防や対処法はとてもシンプルです。
基本は「痛みが出たら冷やすこと」「股関節周りの筋肉をストレッチをすること」「テーピンで固定すること」、この3つです。
この3つをしっかり覚えておいて、腸脛靭帯炎にならないよう、日ごろから予防をしてくださいね。