あなたは、家のドアの角に小指をぶつけたときにどんなことをしますか?
もしくは、運動中に足を痛めたときはどんなことをしますか?
多くの人は痛い場所に手を当てる行動をとりますよね。
この行動、無意識にやっているようなのですが、しっかりとした科学的根拠があったんです。
手当てをすると痛みが和らぐ。
では、なぜ手当てをすると痛みが和らぐのでしょうか?
じつは、痛み感覚より触られた感覚の方が優先されるからだったんです・・・!
つまり痛いところに手で触れる行動、“手当て”には痛みを和らげる効果が実際にあったわけです。
手当ての効果、すごいですね。
ということで今回は、手当てをすると痛みが和らぐ理由の最新情報を伝えていきます。
それでは、まいりましょう。
手当てで痛みが和らぐ効果は感覚の優先順位が決まっているから
痛いところに手当てをして、触ることによって痛みが和らぐ。
じつはこれ、脳の優先順位で触覚が大切だと認識されているから痛みが和らぐんです。
というのも、脳というのは複雑な構造でできているのかと思われがちですが、わりとシンプルな構造になっています。
これはいわば仕事でも一緒。
仕事を複雑化して時間をかけながら問題解決する人よりも、仕事をシンプルに捉えてシンプルに短時間で安全に解決できる人の方がなんだか信頼できますよね。
手当てで痛みが和らぐ現象も、脳がわりとシンプルなネットワーク構造でできているから起こるんです。
脳は、複雑な感覚が一緒に来ると、一気に来た感覚の中に優先順位を付けます。
人間の感覚には「触れる」という感覚や「冷たい」、「かゆい」といったようにさまざまな感覚がありますよね。
同時に複数の感覚を受けとった脳は、そのなかから「お!これが一番大事な感覚だぞ」とその場その場で優先順位を付けて選択するわけです。
じゃあ、どんなふうに優先順位が決まっているのか気になりますよね。
ということで、次は感覚の優先順位について解説していきます。
触覚は感覚のなかでも優先順位が高い
じつは、痛みよりも触覚、つまり何かに触っているという感覚の方を脳は優先的に採用するのです。
だから、たとえば、こんなとき。
頭を叩かれて「痛い」と感じたときに、手で頭を覆って「触覚」という感覚を入力することによって、痛みの感覚が弱まるのです。
痛みよりも触覚の方が優先されるので、「触られたという感覚はわかるのだけど、痛みはあまり感じない」という現象が起こります。
結果、手当てをすることで痛みが和らぐわけなんです。
ここで、こんな疑問をお持ちの方もいるはずです。
「触った感覚なんてちょっとした感覚なんだから、そんなに痛みが引くわけないでしょ」と。
というわけで、次は手当てでどのくらい痛みが和らぐのかを数値化した実験を紹介します。
触覚で痛覚はどのくらい軽減するのか
これは、以前「NHKチコちゃんに叱られる」で行われたペインビジョンという機器を使った検証実験がとても興味深かったので、参考にさせていただきます。
ペインビジョンとはこんな装置です。
電気刺激を入れることで、どのくらいの痛みが現れたかを検知する機械になります。
結果は以下の通りです。
手を当てない場合 33.5
手を当てる場合 9.2
痛みの程度はおよそ1/4にまで減少したのです・・・!
この検証実験からも、手当てが痛みを和らげる効果のあることが考えられます。
手当ては痛み軽減に効果あり!手当の活用法
自分が怪我をしたときや、自宅でドアの角に小指をぶつけた時にも手当ては効果的です。
ですが、自分以外の痛みも取り除くことができるのであれば、有効ですよね。
あなたのお子さんが転んで泣いてしまったときも、手当ては効果的です。
さらに、スポーツトレーナーの仕事をしている人は、選手が怪我をしてしまってあなたのところへ来た時に手当てをしながらアプローチをしてあげるのも選手が安心してくれるのでおすすめです。
ちなみに、「チコちゃんに叱られる」では、他人に手を当ててもらった場合の実験もしています。
結果は以下の通りです。
手を当てない場合 37.6
手を当てた場合 9.5
やはり、痛みの度合いが1/4に減少できました。
自分で手当てしても、誰かに手当てしてもらっても、同じ効果があることがわかりました。
【応用編】手当ての効果で心と体を整える
ここまでで、手当ての効果には痛みを和らげる働きがあると解説していきました。
ですがじつは、手当ての効果にはもっっと深い活用法があるんです。
手当ての効果は痛みを取るだけじゃない!
健康法にも活用できる手当ての応用編を紹介していきます。
「三脈の法」で自然治癒力アップ!
三脈の法とは、その名の通り、3つの脈を使った手当て療法のひとつです。
三脈の法のやり方は簡単です。
- 左頸動脈(左の首)
- 右頸動脈(右の首)
- 橈骨動脈(手首)
の3つの動脈を触れて、鼓動を感じるだけです。
この三脈の法、元々は自身の潜在意識に働きかけて、命の危機を回避する未来予知法として活用されていましたが、現在では健康法としても有名なものです。
私の悪い癖で、ちょっと話が反れてしまいましたので、元に戻しますね。
人間は心臓の鼓動を感じると、心身ともに癒されて自然治癒力が取り戻されていきます。
「命の刻むリズム」を感じることで、自律神経が整うから、自然治癒力が取り戻されると考えられているのです。
「オギャー、オギャー」と泣いている赤ちゃんに、ママの胸の鼓動を感じさせてあげるように抱っこすると泣き止みやすいですよね。
(赤ちゃんはお腹の中にいるころからママの鼓動を感じているから、心地よい記憶が無意識に蘇って泣き止むという解説をする人もいますが、パパの胸の鼓動を感じさせて抱っこしても赤ちゃんは泣き止みやすいです。)
胸の鼓動を聞いて赤ちゃんが泣き止むのも、心身ともに癒されるから。
三脈の法は、「命の刻むリズム」を感じることで、人間が本来持っている自然治癒力を取り戻せる効果があるのです。
「最近、ストレスが溜まって疲れやすくなっているな・・・」と感じたときに、ぜひ試してみてくださいね。
手当てで胃腸の調子を整える
手当てには胃腸の調子を整える効果もあります。
やり方は、
- 片手を鳩尾(みぞおち)
- もう片手を臍(へそ)
のあたりに手当てします。
鳩尾に手当てする理由はたくさんあるのですが、胃と腸を結ぶ”道”を整えてあげるのが主な理由です。
胃腸の調子が悪いと、この胃と腸を結ぶ道が上手く働かなくなっていることが多く、ここがうまく働かないと、食べ物がスムーズに移動しなくなってしまいます。
これはちょうど、「工事したほうがいいよね」と思うほどガタガタしてしまった道と同じ。
道が整っていなければ、車もスムーズに通らなくなって、渋滞を起こすきっかけになります。
食べ物の形は千差万別。
車ほど移動機能が充実していませんから、食べ物の通る道を整えてあげる必要があるんです。
そして、臍(へそ)の手当て。
ここはちょうど、小腸があるところで、栄養や水分の8割はここで吸収されます。
適切に食べ物の栄養・水分が吸収されれば、身体に毒となる成分を大腸に送り出せて、排泄ができるのです。
便秘のときは、お腹の違和感を感じるところに手当てをしてみてください。
手当てで免疫力アップ
手当てで免疫力もアップ!
- 胸の中央
- 足の付け根(鼠径部/そけいぶ)
に手当てします。
ポイントは手ではなく、手当てしたところに意識を向けること。
胸に意識を向けられると呼吸が整い、全身の細胞に酸素が行き渡りやすくなります。
また足の付け根、鼠径部(そけいぶ)には老廃物が溜まりやすいです。
日中の立ち仕事が多かったり、家事をして横になる時間がない人は、足が下がりっぱなしの状態。
日中頑張ってくれた足に溜まった老廃物を流れやすくするために、鼠径部に手当てをします。
寝る前などに行うと、リラックスしてできますよ。
まとめ
いかがでしたか?
手当てには痛みを和らげる効果のある理由を解説していきました。
手当てで痛みが和らぐ理由は、触覚が痛覚よりも優先されるからだったんです。
「痛いの痛いの飛んでけぇ~」
筆者は、小さいころに「こんなんで痛みが本当に飛んでいったら苦労しないわ・・・」といがんだ考えをしていたときもありました。
手当てとはよく言ったもので、じつは「痛いの痛いの飛んでけぇ~」は科学的に正しかったんです。
痛みを感じている人が近くにいる人は、ぜひ痛みで苦しんでいる人に手当てをしてあげてください。
きっと、その人にあなたのやさしさが伝わるはずですよ。